人間の尊厳や平等の大切さを伝えてきた「水平社博物館」(奈良県御所(ごせ)市)が3日、リニューアルオープンする。部落差別の根絶をめざす全国水平社の創立100年に合わせた。「鬼滅(きめつ)の刃」に「ONE(ワン) PIECE(ピース)」、ザ・ブルーハーツ――。博物館がこれらの人気漫画やアーティストのCDを展示する狙いとは。(宮崎亮)
《じぶんたちと ちがうひとは、
やっぱり ちょっと きんちょうしちゃう。
じぶんと なにが ちがうかが、よく わからないから。》
館内の一角に、ページを開いた状態の絵本が展示されている。イラストレーターのヨシタケシンスケさんと現代アートなどが専門の伊藤亜紗(あさ)さんの「みえるとか みえないとか」だ。
《異形を恐れるは己の無知ゆえ!!》
こちらは、漫画「ONE PIECE」の作中のセリフから。
《 Get up,stand up!(起き上がれ 立ち上がれ!)
Stand up for your right!(君の権利のために立ち上がれ!)》
伝説的なレゲエ歌手、故ボブ・マーリーの代表曲の歌詞も紹介されている。
《永遠というのは人の想(おも)いだ 人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ》
漫画「鬼滅の刃」に出てくるセリフだ。人権を大切にする社会の実現へは道半ばだが、「水平社宣言」の理念は永遠で、それをみんなと共有したい。そんな思いが込められている。
博物館は1998年、水平社運動のあゆみや人間の尊厳と平等などについて伝えるために、水平社宣言を起草した西光(さいこう)万吉らの地元・御所市柏原(かしはら)に建てられた。奈良人権文化財団が運営し、延べ約35万人が訪れてきた。
これまでは、所蔵資料約5万点から、水平社運動に関する写真や古いポスターなど約400点を選んで展示していた。しかし、「文字資料が多く子どもには難しい」との声が寄せられていたため、今回、約250点に絞った上で、「人権の本質を伝えた描写がある」漫画やCDなどを加えた。
民族や性のあり方の多様性など、より広く「人権」を扱い、水平社宣言の理念に通じる国連のSDGs(持続可能な開発目標)についても解説。国際人権博物館連盟に加わる日本唯一の博物館であることなど世界とのつながりも紹介した。
館長がこだわった「ザ・ブルーハーツ」
自身も被差別部落出身の駒井忠之館長(49)に、リニューアルの狙いや思いを聞いた。
来館者の4分の1が小中学生…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル